03 11月 鼻で吹く意味に対する一考察 〜音響的観点から〜
なぜ、鼻で吹くのか。楽器演奏において、口ではなく鼻を用いる理由はどこにあり得るのか。一つは伝統や信仰上における意味である。また、もう一つは弱い息を出すことができるという、機能的な意味である。
だが、これだけではない。それは経済学に言う「比較優位」であると思われる。ある有能な者に全てを任せると時間がかかる。その結果、有能な者が有効ではない使われ方をしてしまう。こうして利益が失われる=機会費用がかかる。そこで、分業により有能な者を有効に使うのが、この比較優位の考え方である。
口は共鳴器としての効果を持つことは口琴などの楽器だけでなく、日常会話において使われる言語、特に母音に強く現れており、その多様な音は目をみはるものである。この口を息の出口として使ってしまうと、この効果は微少なものになってしまうのだ。有能な共鳴器である口が、他の仕事、すなわち呼吸にかかりきりになってしまうのだ。
一方、鼻の共鳴器としての役割であるが、口のようには存在しないものである(これは、口が舌を使えるためであろう)。一方で息を吐くことが十二分に可能であることは、各地の鼻笛が証明している。さらに、独特である嗅覚としての役割は、楽器演奏の上では非常に小さい。ただし、いい香りの楽器が素晴らしいことは論をまたない。
どちらも楽器を吹くという仕事はできるが、より強力な共鳴器となるのは口の方である。口で吹く際にはその共鳴器としての能力が失われ、莫大な機会費用がかかっていることになるのだ。一方、口に共鳴器の仕事を、鼻に吹く仕事を与えることは、それぞれに得意分野を割り振ることとなり、機会費用を最小化できるのである。これは利益の最大化である。
これは「鼻で吹く」大きな理由となるであろう。
P.S.発見なされた方、名前は知らないがこの比較優位を発見された方に、敬意を表したい。ブラジルの先住民か、どこか西洋の発明家か、その両方かわからないが、敬意を表したい。
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